Dad Noise

「あること」について悩むことが多いのに、そのことを指す日本語が、おそらく無い。ちょっと困る。

それは、公共の場で聞こえてくる、他人が出す喉の音と鼻の音である。くしゃみはそこには入らない。くしゃみの現象はちょっと好き。風邪や花粉の症状による、普通に鼻をかむ音やすする音、咳の音も、仕方ないと思えるから耐えられる。友達や身内だったら心配になるし、早く治ればいいなと思う。

そうではなくて、んんッと喉を鳴らすとかズコーッと音を立てて鼻をすするとかスス、ススと空気をすする音である。一定間隔でずーっと聞こえる。私にとっては全く意味がわからない不快な音である。このあと話すわけでもないなら喉は鳴らさなくていいし、素直に鼻をすすればそんな音は出ないし、空気をすするのはまず意味がない。

「喉を鳴らす」だと猫がリラックスしたときのゴロゴロ音と同じになってしまう。あと私はあんまり使わないけど、「美味しそうな料理を見てゴクンと喉を鳴らす」とかも同じだ。「ズコーッと音を立てて鼻をすする」なんてちゃんと伝わってるかも分からない。あのすすり方は(今やってみた)私にはできないから他にどう言えばいいか分からない。「鼻を鳴らす」にすると、今度は犬がクンクン鳴く声のことになってしまう。チック症・トゥレット症もたぶん違うと思う、、。

英語ではclear one’s throatを知っているけど、この熟語はたぶん、「大事なことを話す前に聞き手の注目を集める」とか「仕切り直す」という意味を持っていると思う。同じんんッでも、一定間隔でずーっと聞こえるアレじゃなくて、一回限りのほう。日本語だと何?咳払いかな。日本語の咳払いは「空気読めよ」の意味が大きい気がする。何にせよこれじゃない。

あの音は、電車や図書館、自習室などの静かな公共の場所で特に気になる。ほとんどの場合、オジサンが音源であるが、若い男性でも結構いる。女の子でもたまにいる。どれだけ静かで良い空間でも、そういう人が1人来ただけで、もう居られない場所になってしまう。イアホンで逃げられない時もある。大学受験の時に隣の男子がそういう音を出す人で、もう自分がどうなってしまうか分からないくらい不愉快だった。

私はクラシック劇場でバイトをしていた。クラシック音楽好きなお客様が集まる場所である。もちろんそういう音を出すおじさんもたくさん来る。しかし、いざコンサートが始まると、ピターッと静かな空間になるのである。つまり、あの音は自分の意思でコントロールできるということである。それならどうにかならないものかとずっと悩んでいた。

あるとき、Family Guyを観ていたら、Dad Noiseという言葉が出てきた。

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こ、れ、だ!!!Dad Noiseだよーー!!!解像度が高すぎるー!あ〜〜スッキリした!

言葉を手に入れてしまえば、心持ちは少し変わってくる。「あらまだ若いのにDad Noiseなのね」とか心の中で言えるようになったことはまあ置いておいて、問題・区分が明らかになることで、誤解が減るし、共感してもらえるようになるし、対策もわかってくるかもしれない。一歩前進!

こういう、特定の音に嫌悪感を抱く症状をミソフォニア(misophonia=音嫌悪症)というそう。診断されたわけじゃないけど、それに近いものを持っているなと思う。

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