Let me tuck you in

目を覚ますと、私は虫を見つめていた。虫は、ベッドの横に置いてあるベンガルゴムの木の、白い鉢の縁で、静かにしている。ハチとアブの間のような、2cm程度の羽虫である。昨日は鉢を外に出していたから、そのときに付いたままなんだろうなと思う。手元に昨日の夜脱いだ無印良品のもこもこ靴下があったので、どうせ洗うしと思って拾い、口を開けて、すくうように静かに虫を包む。靴下の中で暴れまわるかと思ってきつく口を押さえていたが、虫のほうは特に何も思っていないようだ。裸足のまま玄関を出てかがみ、靴下を逆さにして、口を開いてみる。虫は背中から落ちてきて、すこし驚いてから姿勢を直し、落とされた場所で落ち着いた。この動きの鈍さは、もしかして寝ているのかもと思った。ゴムの木から、靴下に包まれて運ばれて、玄関の前に移されても、まだ寝ていた。虫の眠りは意外と深いのかも。落としてごめん。

小さい頃の私を思い出す。夜ご飯を食べた後に、リビングのソファで横たわってテレビドラマを見ていたらいつの間にか眠っていて、仕方がないからと2階にあるベッドまで父がお姫様抱っこして連れて行ってくれた記憶。ソファから抱き上げられて少しだけ目が覚めるけど、寒い廊下も、階段のオレンジの光も、うとうとと気持ちよくて、少し冷えた足が毛布に包まれる瞬間も大好きだった。いつが最後だったかな。今では父は同じことを飼い犬にしているし、犬のほうも、うとうとと気持ちよさそうに運ばれている。

私のやり方は少々乱暴だったけど、あの虫も、眠りの途中でふわふわの靴下に包まれて、運ばれている間はぼんやりと起きて、寝るべき場所で二度寝したのなら、気持ちよかったのかもしれない。愛情表現を学んだ。

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