アウストラロピテクス・アナメンシスが登場し、その系統を受け継ぐとされる数種のアウストラロピテクスが発見された。今回は、その中でも比較的化石が多く見つかっており、よく研究されているアウストラロピテクス・アファレンシスについて見てみよう。
アウストラロピテクス・アファレンシスの中で最も有名な化石は、エチオピアの約320年前の地層から見つかった「ルーシー」である。発見したドナルド・ジョハンソンの調査隊は、この大発見を祝ってキャンプでビールを飲みながら、The Beatlesの「Lucy In The Sky With Diamonds」を大音量で流しながら騒いだ。そこからこの愛称が使われている。
アウストラロピテクス・アファレンシスは、アルディピテクス・ラミダスよりも優れた直立二足歩行を行なっていた。これがはっきりとわかる証拠が、タンザニアで見つかった足跡の化石である。これは、アファレンシスが生きていた約375万年前の化石であり、人類最古の足跡である。この化石には、3~4人分の足跡が残されており、まるで親子のような大小の足跡が並んで歩いた形跡もある。この足跡から、アファレンシスはすでに土踏まずを持っており、地面からの衝撃を吸収しながら長時間歩くことができたということもわかる。身長1m強のアファレンシスが残した足跡の歩幅は62~94cmで、現代人の歩幅とあまり変わらない。
ルーシーは、一部の頭蓋骨と全身骨格が見つかっている。身長110cmの小柄な女性で、他のアファレンシス化石から考えるに脳はこれまでの猿人類とほとんど変わらない大きさを保っている。ルーシーの骨盤幅は現代人のものと同じで、脚はやや短いので、歩くたびに現代人よりも重心が上下しただろう。ルーシーが歩く様子を上から見てみると、幅広の骨盤を使って一歩ごとに腰を大きく回転させて歩くことが想像できる。このようにして、現代人と変わらないだけの歩幅を実現させていた。
さらに、ルーシーの発見の翌年、アファレンシスの幼児の頭蓋骨を含む13個体分の化石が発掘された。子供から大人、メスもオスも見つかった。これらは「最初の家族」と呼ばれている。
アルディピテクス・ラミダスらが過ごしていた安全なヤシの木の疎林が無くなり、乾燥化した大草原の中が残された。大小の肉食獣たちが闊歩するこの大地で、並んで歩き、家族で過ごしたアウストラロピテクスは、いったい何を食べて、どうやって生き延びたのか。