Extinction and Emergence

疎林に住み、ヤシの実などの食料を抱えて運ぶことで直立二足歩行が上達していったアルディピテクス・ラミダスは、絶滅した。その原因は定かではないが、丁度同じ頃に地球規模の環境変化が起こっていたことと無関係ではないだろう。

その頃のことを、鮮新世と呼ぶ。鮮新世は、地球規模で大陸が移動し南北アメリカが繋がったり、ヒマラヤ山脈が形成されたりするなど、大地が激しく変化した時代である。この変化のなかで、大量の岩石が浸食され、海に流された。海に流された大量の岩石はカルシウム塩となり、大気中の二酸化炭素を吸収した。すると大気中の二酸化炭素濃度が減少し、地球の温室効果が薄れてきた。そして、これまでにも進んでいた寒冷化がさらに進行し、地球規模で乾燥化が見られた。

アルディピテクス・ラミダスの住んでいたアフリカの大地も乾燥化は免れず、彼らが慣れ親しんだヤシの森林は、次第に無くなっていった。身を隠す場所も食べるものも失ったアルディピテクス・ラミダスの化石は、この時期を最後に見つからなくなっている。残ったのはイネ科の植物が生える草原であり、インパラやバッファローなどの有蹄類が群れを成して波のように進み、それを狙うライオンやジャッカルなどの大小の捕食者が技を競う世界である。

人類の軌跡は、ここで途絶えてしまったのか。

いや、その直後(20万年後)に全く新しいタイプの猿人類が突然現れたのである。これが、アウストラロピテクス・アナメンシスである。アウストラロピテクス・アナメンシスの化石はエチオピアなどで発掘されており、アルディピテクス・ラミダスとほどんど同じ場所に位置していた。しかし発見された地層は相互に全く異なっており、2者の間には20万年の空白が存在する。すなわち、アルディピテクス・ラミダスが絶滅した後の大地に、アウストラロピテクス・アナメンシスが現れたのである。

これまでアナメンシスの化石は歯や下顎くらいしか見つかっておらず、彼らの生態の解明はあまり進んでいない。しかし、2019年(つい最近)にエチオピアでヤギの囲いを作ろうと地面を掘っていた男性が、特別な骨を見つけた。これが、私たちが初めて目にするアナメンシスのほぼ完全な頭蓋骨だった。これは人類史に刻まれる大発見であり、近いうちにこの頭蓋骨には相応の愛称がつくだろう。

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