small talk 4

天気が良い日が続いている。最近は散歩が楽しくて、疲れを感じず、時間があればどこまでも歩いて行けるような気がしている。

この前は陽が沈んでからふと思い立って外に出てみた。雨上がりのアスファルトを、背の低い街灯が照らしている。しばらく歩いて、脇道から子供の声が聞こえたかと思うと、揃いの浴衣を着た集団が合流してきた。暗くて、お互いの顔もあまり見えていない。聞こえてくるのは草履の音くらいで、こんなに大勢の人が歩いているとは思えないような静けさだった。太鼓を持っていそうな人に気づく。そうか、みんなお祭りに向かって歩いているんだ。

また一つ道を変えてみると、想像もしていなかったほど大勢の人がお祭りを見に来ていた。ただの散歩がお祭りに代わって嬉しかったので、少し足を止めてみることにした。たくさんの人の中で立っていられる場所を探し、しばらく居てみると、近くに人が立ったり、たまに目が合ったりするうちに、居ていい場所に変わっていく。自分の中での居心地が変わっていくのを感じる。人が多い場所は苦手と思っていたけど、そうでもないみたい。思っているよりも寛容で、とても温かい。

学生の頃に嫌いだった電車も駅前の雑踏も、今なら違う気分で居られるかもと想像してみる。

別の日、夕焼けの川沿いを歩いていると、夕日の光線が水平に拡がっているのを見た。犬を散歩させていた女性が、突然犬を拾い上げて走っていったので、何かと思って見ていると、犬をぽんと置き、自分はそこから急いで離れて、首から下げていた一眼レフを構えた。今にも沈む夕日を見て、シャッターチャンスを逃すまいとしたのだろう。犬は置かれたままの重心でカメラ目線を続けている。撮影に慣れている様子がとても愛らしく、女性も楽しそうだったので、私は声をかけて、写真を見せてもらった。オレンジの逆光に照らされたふわふわの毛玉と、不安そうにこちらを見つめる3つの黒い点。とてもいい写真で、私も嬉しくなった。

そういえば、この前はGoogleStreetViewの車と目が合ったな、と思い出して検索してみる。引っ越してしまって今はもう歩かない道を、自分がランニングしている様子が写真に写っているのを見つけた。StreetViewのコマを進めて、ついでに当時住んでいた家を見てみると、会社にいつも履いて行っている靴が外干ししてある、というか車の横にぽつんと置いてある。私、生活しているなあと感じた。

Diary

Anthropology